テクニック、心、そして涙の理由。

テクニック、心、そして涙の理由。ビジネスでよく、これをするとこうなるよ、こうすればもっと稼げるよ、といった、ある意味裏技と言っても良いようなノウハウを駆使して...

もっと言えば、普段からがんばっている人達が失敗を通して学んだノウハウの集大成から表面だけをすくい取り、それを自分のビジネスに都合よく当てはめようとする人達が市場を埋め尽くしていた。

其の様子を見ながら、俺は涙した。

涙の理由を分かってもらうためには、ある事件についてお話する必用があると思う。それは今日からちょうど3年と24日前の話。事件は魚屋組合の会合で起った...

さて、今日はこの辺りでお開きにしましょう...などと組合長が言い、帰途に着こうと皆がパイプ椅子から立ち上がろうとした其の瞬間、港町3丁目商店街で代々魚屋を営む魚田仁八(ウヲタジンパチ)さんが手を上げてこう言った。

「あのぉ...偶然発見したのだけれども...皆さんのお役に立てるかもしれねぇ情報があるッス」

仁八さん曰く、秋刀魚を買ったお客さんに、

お客さん目が高いね、その秋刀魚は他の秋刀魚と違って、ウマさが倍増だよ。どうして分かったの?選んだね、選んだよ。目がいいよ。と言うかお目が高いね。良い学校出てるだね、きっと。だったら、この大根も買うね。この大根、値は二倍だけど、この秋刀魚にはこの大根がぴったりだモンね。

そう言うと、お客さんは大根はもちろん、その他ニンジン、キャベツ、キャットフードなども同時購入し、顧客単価が最低で前月比2.5倍になってしまったという。

なぜそんなことが起るのかと理由を尋ねられた仁八さんは一言、「んなモン、知らん。俺が知ってるのは、これを言えば売り上げアップするっつぅことだけだ」。

とにかく、仁八さんの話は一気に広まり、市内の魚屋全てが魚以外の商材も扱うようになり、来店する客さんに対して、お客さん目が高いね、その秋刀魚は他の秋刀魚と違って、ウマさが倍増だよ。どうして分かったの?選んだね、選んだよ。目がいいよ。大学出だねきっと。だったら、この大根も買うね、きっと。この大根、値は二倍だけど、この秋刀魚にはこの大根だよね、やっぱ博識だね!

などと、多少のバリエーションを交えながら、それでいて根本部分には手を加えずに語りかけはじめた。そして案の定、売れた。そのうわさは隣町も伝わり、周辺都市の魚屋という魚屋の店先では、店主がお客さんを褒めちぎり、それに浮かれてお客さんが余分なものを買いまくるという流れが出来上がった。

それで不満を言う人はいなかったし、仁八さんは敏腕マーケッターとして引っ張りダコになって嬉しかった。皆がニコニコして暮らしていた。

時は流れてそれから3ヶ月。どういう訳か、魚屋に来る人の足がパッタリと途絶えた。

急遽開かれた組合会議では、もっとがんばって、例えば、声を大きくするとかして、努力しなければ駄目だ!がんばるぞ、エイエイ、おぉ!!!という掛け声が響いた。

その数ヶ月前のある夜のこと。魚を毎日食べて健康になろう!を合言葉に集まった同志からなる、魚食健康同盟港町支部の婦人会がファミレスに集まって密談をしていた。

もんもんとする雰囲気の中、口火を切ったのは、この季節、毎日、最低でも秋刀魚を2本食べることを習慣にしている辛延蚊名子(シンノベカナコ)さんだ。

あのですね、今日集まってもらったのは他でもない、最近、魚屋さんで、心のこもらない、ある意味、人をコントロールして無理やりに顧客単価をあげよう!とする対応が目立つ気がするデス。

なぜそう思うのかというと、市内の魚屋さんのどこにいっても、同じようなフレーズで同じようなことを、必ず言うからデス。最初は嬉しくて、大根を追加で買っちゃったり、天ぷらや洗剤なんかも一緒に買ってたんですけど...でも今は、言うぞ、きっと言うぞ、と思っていると、どういたしまして。案の定同じフレーズを言うのデス。

店を変えても同じです。私は市内の4軒試しましたけど、ほぼ同じフレーズで攻めてきます。もうこれは陰謀です。

こちらが例えば、この秋刀魚はどうですか?目が死んでますが、鮮度は?と魚屋の旦那に問うとします。すると私の質問などほったらかしで、お客さん目が高いね、その秋刀魚は他の秋刀魚と違って、ウマさが倍増だよ...と、いつものフレーズがはじまるのです。

私思うに、これは心理操作で余分なものまで買わせようという、小手先のマーケティング手段以外の何モノでもありません!!!

そうだ、そうだ!私もなんか変だと思ってた。私なんて、秋刀魚を買いに行ったのに、気がついたらガリガリ君チョコレート味(6本入り)を買ってたのよ(私アイス好きじゃないのに、家に帰ってびっくりよ)。

あら、あなたも!?私なんて犬を飼ってないのにドッグフードを半年分買っちゃったのよ。

といった声が、次々と上がった。密談がお開きになる頃、婦人会では、もう市内の魚屋さんを使うのはよそう、鮮度は落ちるかもしれんけど、スーパーで買うなどしよう。という密約が成立したのであった。

それから数ヵ月後のある日。不審に感じていたのは婦人会の面々だけではなかったようで、市内の魚屋の半分は客離れが激しく倒産していた。残りの半分は反省して座禅を組むなどして一日をすごしたが、一回落ちた評判を取り戻すことはかなり難しいことであり、けっきょくその年の年末までに、この町から魚屋さんは姿を消した。

以上が、俺、魚侍(ウオサムライ)六代目社長、草谷魚吉(クサヤウオキチ)が、代々続いた店を潰した経緯なのだけれども、そんな経験をしている俺だからこそ、表面上のノウハウで人を動かして売り上げをアップを図る、というのはマジでやめたほうがいいと思う。

俺が味わった取り返しのつかない悲しみを思うと、皆にも今すぐ気がついて欲しい!俺や、俺の仲間たちがたどった悲劇を、君たちには経験して欲しくないんだ...

という気持ちから出た涙が、この手紙の冒頭でお話した涙なのです、解説が長かったけど。

今俺は魚屋は諦めて、ネットでハワイアン衣料の輸入販売をしてるんだけど、ネットには俺が魚屋で犯したのと同じ過ちを犯すビジネスが山ほど存在してる。

例えば、言葉だけでお客さんをコントロールしようとして、決まりきったセールスレターのフォーマットを表面的に勉強し、こうすれば客はこう動く、ああすれば客は思わず買わずにはいられない。うっしっし。

という風に、テクニックを極めるのだけれど、その裏にある、本来であればもっとも重要な「商品」や「サービス」といった本質、そしてビジネスの基盤となる「人間対人間のコミュニケーション」をないがしろにすることによって、結局は自分の首を自分で絞めているビジネスが無闇やたらに多い。

本来最初に学ぶべきなのは、テクニックではないと俺は思う。

最初にあるべきなのは、「お客さんが抱える問題を解決したい!」という内から湧き出る感情であり、其の次に自信を持ってお勧めできる商品/サービスが来る。

臭い言い方で言えば、私のビジネスでお客さんはマジで幸せになるぜ!俺のビジネスは、お客さんの人生にポッと明りを灯す存在だぜ!といった、言って見れば商品やサービスの前に「心」、「ミッション」、「思いやり」があってこそ、それを実現するための手段、テクニックが活きて来るんだぜ!!!と、俺は店を潰す過程で痛いほど学んだんだ。

表面上のマーケティング・テクニックは、市場に浸透してしまった時点から、マイナスの要素にしかならない。

同じ手口を使う人で市場があふれ返った時点で、「あ、またこれかよ」、「あれ、またこの言い回し?!」、「何か、うざくねぇ?!」といった感情の方が先行しはじめ、本来伝えるべきことが伝わり難くなる。

知らず知らずのうちに、そのテクニックを駆使する人達の派閥に属す派閥者として市場に認識され、最後は「あ、あの系統の人ね」とか、「あぁ、この宣伝の仕方は、あれ系の人じゃん」などと一般化され、ジャッジされ、一瞥しただけで目をそらされてしまう、なんて存在にもなりかねない。

一方、もし俺たちにまずミッションがあり、心があり、お客さんの生活を改善する手助けが出来るのは俺だ!!!という感情があって、それを表現するための手段としてテクニックを利用するのであれば、これほど効果的なことはない。

人間はやっぱり心だ。

昔はお客さんに良い魚を提供して、「こないだのマグロ、旨かったよ」なんて言われると本当に嬉しかった。もっともっと新鮮で活きの良いのをゲットしたい!という気持ちが自然に湧き上がってきた。商売がとても楽しかった。喜ばれれば喜ばれるほど、売り上げも良くなったし、懐も温かくなったもんだ。

それが、あの忌々しいテクニック主義に溺れ、俺たちは心を忘れちまった。

お客さんは運営者の下心など一瞬で見透かしてしまう。

  • 本人が興味をもって運営しているのか否か
  • 金だけが目的で、仕方なく運営しているのか
  • 当初は燃えていたらしいが、今は惰性で運営しているだけなのか
  • その商品をお客さんに紹介するのが嬉しくて楽しくてたまらないのか

言葉では表せなくても、フィーリングで感じ取ってしまう。

だからこそ、今回のハワイアン衣料のショップを始めるにあたっては、妻と十分に話し合い、共通の趣味で20数年にわたって集めてきたアロハシャツ関連のショップにしよう。この熱い気持ちと知識を活かして、アロハに限らずハワイ独自の文化や生活習慣の素晴らしさを伝道していくショップにしよう、と決めたのだ。

俺たちのネットショップはまだまだ始まったばかりでお客さんも少ない。扱う商品もそんなに多くはない。でもね、喜ぶお客さんの声を聞くだけで、もっと良い商品を、もっと素晴らしい情報を提供していきたい!って気持ちが湧き出てくる。徹夜も苦しくないし、生活もまじで充実している!!!

代々続いた魚屋は潰しちゃったけど(笑い)、そのおかげで色々なことを学ぶことが出来ました。

ありがとう、ありがとう。

草谷魚吉


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