時は2007年3月。その扉をくぐりさえすれば、楽園が待っているはずだった。
ネットショップを始めようと思ったのは、新しく配属された部署の上司が2歳年下で、かつ俺に対して理由無き暴挙を繰り返したから、だけではなかった。
確かに、クレーム対応ばかりを人に押し付けて、俺のウェブデザイナーとしての手腕を全く評価することなく、最後の半年などは外回りばかりで会社でパソコンを開くのはメールチェックとクレーム対応の時だけ。
ドリームウィーバーもフォトショップも、使い方を忘れちゃうほど、俺は門外漢な仕事ばかりを強いられた。俺の肩書きはウェブデザイナーだったのに。悔しかった。
もし暗い路地で上司が一人で歩いているのを見かけたら、後ろからそっと近づいて思いっきり延髄蹴りを食らわせてやろう、ウンそうしよう!などと思っていたのだけれど、別に上司が嫌だという理由だけで会社を辞め、そして退職金をつぎ込んでネットショップに「逃げた」わけではなかった。
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何故でしょう?
などと突然といわれても困るよね。ということで説明します、今すぐに。
ディズニーランドを始めとするシームパークで、ミッキーやミニーが絶対に喋らないのは、それは訪問者の夢を壊してしまわないようにという運営者側の配慮である。
なんで、ネズミの着ぐるみが絶対に喋らないことが、夢を壊す壊さないに関係するかというと、理由はこうだ。
父:お母さん、日曜日はタケルをつれてデズニーへでも行こうかね
母:あら、お父さん。嬉しい...
息子(タケル):ワギャン!!!!(気絶)
この会話からも分かるように、ディズニーランドに行くことは、普段の生活からの開放、ある意味逃避、ある意味白昼夢を見て、無能でわがままな上司や近所の口の悪い奥さん、幼稚園の番長やすぐ怒るママ先生などのことを一切合財全て忘れて、入場ゲートのところでいったんそういった重荷を肩から下ろして、非日常を楽しむという意味が込められている。
そんな非日常のを経験しようと、ガソリン代、レンタカー代、高速代、その他諸経費を払い、いざ入門したとたん、視界に入ってきたのは大きなネズミ。
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現状を維持するための苦痛が、変化に伴う痛みを超えたとき、人はシブシブだけれど動き始める。
5月末、サーバーが爆発した。
全てが遮断され、俺は身動きが取れなくなった。陸の孤島とはこのことかと思った。
海外にあるその大手ホスティング業者とは、契約してから早6年たつのだけれど、今まで大きな問題はなかった。
誰かが俺のアカウントのクレジットカード情報を勝手に変更してしまったり、問い合わせしてもなかなか返事がこなかったりといった、どこでもよくあるような問題は経験したけれど、その間もサーバーはグイン、グインと音を立てて働いてくれていた。
ありがたかった。
それが全て止まった、ある日突然に。
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客商売って何だろう、と思ってブレーキを踏んだ。そしたら、「ちょっと、ちょっと!こんなところで止まっちゃ駄目だよ!!」と大きな声で叱られた。
スミマセン、スミマセン、とアクセルを踏んだら今度は「急発進してんじゃないよ!」と厳しい一言。
俺が免許センターで繰り返し受け続けている技能試験は、本物のポリスマンが試験官として助手席に座るのだけれど、どういうわけか、無闇やたらに怒られる、叱られる、つっかかってくる、といった印象を、初回からビシバシ受けた。
俺が何をしたと言うのか。
俺の16年間伸ばし続けているメタルの象徴であるこの長髪が、「この野郎、ポリスを挑発していやがるな!舐めるな辮髪(ベンパツ)メタル野郎!」と苛立たせてしまうのだろうか。
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